―洗浄・消毒・滅菌の概念― |
◇洗浄の概念(用手洗浄・超音波洗浄など)
|
|
水や洗浄剤などの洗浄液を用いて汚れを除去する。
微生物の数を減少させる。 |
◇消毒の概念(薬液消毒・熱消毒) |
感染症を起こさないレベルまで殺菌または減少させる。一定のスペクトルをもった処理方法。1つの消毒方法ではこれに抵抗する微生物が必ず存在する。 |
◇滅菌(高圧蒸気滅菌・酸化エチレンガス滅菌・低温ガスプラズマ滅菌) |
全ての微生物を物理的、科学的手段を用いて殺菌または完全に除去し無菌状態を作る処理法。 |
|
|
―感染予防の基本は洗浄― |
消毒や滅菌の前に充分洗浄することが重要です。充分な洗浄は消毒に近い効果があることは証明されています。また、水洗せずに消毒すると血液やたんぱく質が凝固してかえって汚れが落ちにくくなります。 |
|
「医療現場における滅菌保証のガイドライン2005」から |
:洗浄により微生物が99.99%減少する
:器材に付着した血液や体液などの固着を防ぐ
:確実な洗浄により、その後の処理における安全性が向上する |
「厚生省保険医療局 ウィルス肝炎感染対策ガイドライン」から |
洗浄によりHBVやHCVの感染をより完全に除去できる。ウイルスで汚染された時の最も基本的な処理方法である。 |
「厚生省保険医療局結核感染症課 / 消毒と滅菌のガイドライン1999」から |
内視鏡の予備洗浄では洗浄により微生物汚染が平均4log10(99.99%)減少することが明らかになっている。 |
|
|
―消毒― |
消毒液を用いる化学的消毒法と、熱水を用いる物理的消毒法があります。消毒液の選択は消毒対象物に充分な消毒効果が得られるよう、消毒液の特性を理解して使用する必要があります。また、薬液が患者や医療従事者に与える影響や環境に与える影響を考慮し安全性に注意をはらう必要があります。
熱水を用いる消毒はこれらの観点から安全といえます。 |
|
「医療法施行規則の一部改正:医療施設における院内感染の防止について」から |
消毒は熱を利用した方法が第一選択である。 |
熱水消毒について |
65℃〜100℃までの熱水は広範囲の微生物に対して有効で、80℃・10分間の処理で芽胞以外の一般細菌やウイルス等の微生物を殺滅もしくは不活性化できます。
ISO(国際標準化機構)では、国際標準の規定を進めており、器具類の熱水消毒には80℃・10分間またはそれに相当する処理が要求されています。
ウォッシャーディスインフェクターは洗浄からすすぎ、熱水消毒、乾燥までの工程を自動的に行う熱水消毒器で「80℃・10分間」、「93℃・10分間」の工程があり高水準消毒とされています。
☆☆☆学会お勧め機種
「80℃・10分間」工程がプログラムされているにもかかわらず低価格な製品。 |
「80℃・10分間」の基準をクリアした医療用洗浄機 |
歯科医院や眼科・耳鼻科などの一般開業医院向けに開発された経済性と小型化を実現。 |
詳細・購入はこちらから(会員割引あり) |
|
|
|
―滅菌― |
医療機器について国際的には微生物が存在する確率を示す無菌性保証レベルは10-6以下が求められています。
これは1,000,000回滅菌したうちの1回が微生物に汚染されているレベルであり、ほぼ「ゼロ」に等しいことになります。 |
|
歯科における主な滅菌法 |
:高圧蒸気滅菌法
:酸化エチレンガス滅菌 |
高圧蒸気滅菌法 |
高温高圧の水蒸気を用いて滅菌を行う方法です。滅菌の確実性が高いことと、高温の水蒸気を使用するため残留毒性が無く医療従事者や環境に優しい滅菌方法です。ただし、耐熱製品でないものには適しません。
右の表は微生物学的に確立された温度と時間の組合せです。これからも判るように温度が高ければ保持時間は短くて済みます。 |
ISO高圧蒸気滅菌条件 |
滅菌温度 |
保持時間 |
121℃ |
15分 |
126℃ |
10分 |
134℃ |
3分 |
|
ただし容器内にいれる滅菌対象物の形や種類、包装方法(滅菌バックなど)で滅菌効率が異なります。特に装置内に滅菌対象物を入れ過ぎると重なった部分などが滅菌できないため、装置容量の70%程度の積載量にすることが重要です。
高圧蒸気滅菌の対象は耐水性で金属製品、ガラス製品、紙や繊維製品、耐熱樹脂やゴム製品が対象です。水、培地、試薬や液状の医薬品で高圧蒸気滅菌条件に耐えうるものであれば滅菌可能です。 |
局方における滅菌条件 |
滅菌温度 |
保持時間 |
115-118℃ |
305分 |
121-124℃ |
15分 |
126-129℃ |
10分 |
|
酸化エチレンガス滅菌 |
|
酸化エチレンガス(EOG)を利用して微生物を死滅させる方法です。比較的低い温度で滅菌処理ができるため、高圧蒸気滅菌に不向きな製品の滅菌に適しています。
ただし滅菌時間が長く、酸化エチレンガスのコストがかかることと毒性が強いため注意が必要です。
また、滅菌対象物の残留ガス除去(エアレーション)工程が必要です。 |
|
|
|
―手洗い― |
手洗いは感染を予防するうえで最も基本的な方法です。手洗いひとつで医療従事者と患者さんの交差感染(接触)の予防と、医療従事者自身を守ることができます。
また、処置前、処置後、処置前後など目的に応じた適切な手洗いタイミングが大切です。
目立つ汚れが無くても処置前に迷ったら、手洗いを習慣づけることが大切です。
手荒れがあると手洗いしても菌数が減少しません。また、傷があるとそこから感染するリスクもあるため、日頃から手のケアに心掛けることが大切です。 |
|
日常手洗い |
流水と液体石けんを使用して手洗いをします。適切な手洗い法を習得すれば簡単に手の表面に付着している菌(通過菌)を除去することができます。
手洗いタイミング
:出勤時 :業務区切り(食事、休憩) :トイレの後 :手が汚れた時
:観血処置を伴わない診療の前後 :手袋の着用前後 |
|
衛生的手洗い |
流水と消毒剤を使用して手洗いをします。手に汚れが無い場合は擦式消毒用アルコール製剤で手指消毒するだけでも除菌できます。
手洗いタイミング
:観血処置をともなう治療の前後 :血液で汚染された器具・器材を取扱った後 |
手洗いの手順 |
手のひらと手のひらをよく擦ります。
|
|
|
|
右の手のひらを左の甲に。その反対の手にも同じ動作をおこないます。 |
|
|
|
指を組合せ手のひらと手のひらを擦り合わせます。 |
|
|
|
反対の手のひらで爪をもみ洗いします。 |
|
|
|
拇指(おやゆび)の間を反対の手のひらでつつむように擦ります。 |
|
|
|
指先は手のひらの中央で円を描くように擦ります。 |
|
|
|
手首も忘れずに洗います。 |
|
洗った手をぬぐう |
|
手洗い後は「洗った手を完全に乾燥させる」ことが重要です。濡れたままではかえって微生物に汚染されるからです。
手をぬぐう方法としてペーパータオルとエアータオルがあります。それぞれに長所・短所がありますが、医療現場で実用的な方法はペーパータオルです。エアータオルは音がうるさいうえ、乾燥に時間を要します。また、水分の飛沫が心配されます。 |
ペーパータオルの長所・短所 |
|
《長所》
:早く完全に乾燥することができる
:その場から離れても使用できる
:複数で使用できる
:使用後にドアノブなどをつかむのに使用できる
《短所》
:ペーパーの供給が必要
☆☆☆学会お勧め機種
手をかざすと自動(電池式)で紙が出てくるオートディスペンサー。直前の人の濡れた手が紙に触れていないため綺麗な状態で使用できます。 |
|
オートディスペンサー |
|
|
詳細・購入はこちらから |
|
オートディスペンサー導入医院はこちらから |
|
エアータオルの長所・短所 |
|
《長所》 :設置後は電気代だけで使用できる
《短所》 :音がうるさい
:乾燥までに時間を要する
:水分が飛沫する
:1人が使用しているとその他の人が使えない
|
|
|
―手指の消毒― |